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近年、欧米の航空関係者が「コミュータ」というときには、一九七〇年代後半から八〇年代前半に急速に伸びてきた都市間の小型定期航空輸送をさすのが一般的である。
米国の場合、従来からコミュータークラスという分類が存在していたけれども、コミュータが一躍脚光を浴びたのは、航空規制撤廃の結果、それらが都市間に進出するようになった七〇年代後半からである。
欧州でも、従来から小型機による定期航空輸送は、離島・辺地を中心にかなり存在していたが、これらは「第三級航空サービス」と呼ばれており、コミュータという用語は、八〇年代以降の小型機による都市間定期航空輸送の発展にあわせて登場してきた。
これを認識せず、欧米での発展がそのまま日本の地方部で実現するかのような幻想に惑わされていたのが日本のコミュータ熱であった。
都市間型コミュータと空白地域穴埋め型との性格の違いの確認を怠ったために、いらざる期待を地方部に抱かせ、誤った政策策定を導いたのである。
欧米都市間コミュータの特性①市場対応型のネットワーク欧州のコミュータ路線は、それぞれの国の主要都市規模クラスを結ぶのがその主流である。
小規模都市や聴き馴れない都市に路線が設定されている場合も、よく調べてみると、ドイツのバーダーホーンのようにハイテク産業の拠点であったり、南仏のベジールのように大規模地域開発の中心地であったりする。
つまり、欧州のコミュータは、十分な産業基盤を既に有している都市に発生するビジネス高速交通需要に対応して、あるいは、発展可能性を持つ地域開発が既に行われている都市において、地域開発の結果発生したビジネス高速交通需要に対応して登場してきたものであり、「市場対応型」ないし「需要対応型」ということができる。
また、米国のコミュータも同様である。
米国には多数のコミュータ事業者が存在し、離島・辺地を運航するものもあるが、主体は、七〇年代後半の規制緩和の波にのって登場した、欧州と同じタイプの、都市間のビジネス路線を運航するものである。
米国のコミュータ事業者の本拠地を調べてみると、全米に多数の事業者があるとはいっても、集中しているのはニューイングランドなどの人口集積地域であること、また、人口が稿密でない州では一、二社程度が存在するに過ぎず、その場合もその本拠地は各州の主要都市であること、等から、欧州同様、ある程度の人口・産業規模を有する都市を結んでいることがわかる。
②コミュータは「地域航空」と名乗るだけあって、本質的には幹線定期航空とかわりはない。
したがって、日本で考えられているように、コミュータは短距離用である、という概念はあてはまらないし、コミュータは地方の地域航空サービスに適している、という概念も、「ジェット機材に適さない需要」とは地域航空サービスだけにとどまらないから、適当ではない。
たとえば、五〇〇キロ、一〇〇〇キロ離れた主要都市間で、ジェット機を導入するほどの需要のない都市間はたくさん存在する。
欧米のコミュータ路線はむしろこのタイプが主であり、地域航空サービスの範躊には入らない。
このように、欧米のコミュータは、日本である種の熱をもって検討された地域航空とは、路線性格上もかなりの開きがある。
③変化してきた資本構成欧米のコミュータ事業者の資本は、大手事業者によるものと、産業航空(GA)から発達した、地元の企業・個人資本を中心とする独立系資本に大別される。
しかし、コミュータ事業の発展は、後者の資本構成に変化をもたらした。
第一に、事業を拡張するには地元資本やGA資本だけでは対応できなくなってきており、一方、投資家もコミュータの成功を目のあたりにして投資先として有望とみなすようになってきたため、最近では金融機関などの機関投資家の参加や公開株式市場での資本調達の例もみられる。
第二に、大手系のコミュータ事業者は、従来は、TJASの子会社である日本エアコミューターのように、大手にとってお荷物であった離島辺地路線の分離を図るために設立されたものが多かったのであるが、八〇年代になってからは、積極的にコミュータ子会社を設立したり、買収するケースが増えてきた。
右記二つの動きは、まさに、八〇年型コミュータがビジネスーコミュータであり、投資家にとって、また、大手航空会社にとって有望な分野であることが認識されてきたからにほかならない。
この動きの中で、現在重要なキー・ポイントとなっているのは、大手事業者の座席予約システム(CRS)への参加である。
営業エリアが局地的であるコミュータ事業者にとって、国際的、州際的に動くビジネス客需要を確保するためには、いかに大手との提携を行っていくかが生存の決め手であり、これに参加するため最大限の努力が図られており、その苦労は「CRSブルース」と呼ばれるほどである。
他方、CRSへの参加に対応して、米国では、大手によるコミュータ事業者の系列化がすすんでいる。
欧州諸国でも事態は同様で、国籍の異なる大手のCRSへの参加・業務提携といった、国際的な系列化もみられる。
また、系列化は、競争の激化によるコミュータ事業者の合併や倒産、親会社との合併とあいまって、コミュータ事業者の少数化と巨大化をもたらしてきているが、このような通常の産業と同様の、資本の論理による動きにも、コミュータのビジネス的性格が示されている。
④マーケット指向の運賃体系規制の緩い英米では、運賃も航空会社の裁量で自由な設定が可能である。
緩い参入規制ゆえに競争は熾烈であるから、運賃は重要な競争手段として認識されている。
欧州大陸諸国でも、鉄道や自動車との競争は激しいし、旅客の運賃負担力は常に一定ではないから、需要喚起のためのプロモーショナルな運賃は収入増に寄与する。
日帰り割引、オフーピーク時間帯割引、家族割引、週末割引、乗継ぎ割引はいまや常識である。
このような市場対応運賃の存在もまた、欧米コミュータのビジネス性をよく示している。
欧米ビジネスーコミュータの発展理由①潜在需要を顕在化させた規制緩和欧米型コミュータが近年急速に発展してきた理由は、そのビジネス性と大きく関係している。
最大の要因は、従来厳しい参入規制のために阻止されていた路線開設が、規制撤廃呆国)ないし規制緩和(欧州)によって容易になったためである。
すなわち、大手事業者のジェット機材では需要が少なすぎる区間であっても、コミュータ事業者の高い生産性と小型機材ならば採算裡の運航が可能となる。
規制緩和と欧米型コミュータの発展に関して重要なのは、緩和は、市場対応の供給を阻んでいた人為的措置をとりはらって、既に存在した潜在需要を顕在化させただけであり、採算裡の運航が不可能な需要しかない地方部の路線の運航を行う離島・辺地型とは一線を画する点である。
すなわち、規制緩和によって登場したコミュータ事業者は、需要があってもうかるとの判断で市場参入したのである。
ここに、需要がビジネス客中心であるというだけでなく、事業が採算第一にビジネスライクに営まれているという、欧米のコミュータの「ビジネス性」のもう一つの側面がみられる。
②ビジネス需要に対応した機材の登場七〇年代後半から八〇年代前半にかけて開発・導入された二〇席弱から三〇席台の新鋭余圧高速機材は、欧米型コミュータの発展の重要な要因の一つである。
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